「ゲームを取り上げると、ものすごく怒る」
「放っておいたら、ずっとショート動画をスワイプしている」
子どもの同級生の親や、幼稚園のころから付き合いのあるママ友・パパ友と話していると、最近こんな話をよく聞きます。
そんな中で知ったのが、
「ドパガキ」
という、なかなか強烈な言葉でした。
ゲームやYouTube、TikTokなどのショート動画といった強い刺激を次々に求める子どもを指す言葉として、ネット上で使われている俗語のようです。
もちろん医学用語ではありません。
僕自身、子どもたちを「ドパガキ」と呼びたいわけでもありません。
ただ、この言葉が使われるようになった背景にある、親たちの不安には少し分かるところがあります。
次から次へと流れてくるショート動画。
なかなか終わり時を見つけられないゲーム。
「もう終わり」と言われてもやめられない。
最近では、Roblox(ロブロックス)のように、子どもたちの間で人気のゲームプラットフォームもあります。
もちろん、Robloxそのものが悪いという話ではありません。
友達と一緒に遊んだり、自分で世界を作ったりできる面白さもあります。
ただ、たくさんの遊びが用意されているからこそ、「もう終わり」と区切るのが難しくなることもあると思います。
でも、これは本当に子どもの意志が弱いからなのでしょうか。
大人だって、気がつけばSNSを開いています。
YouTubeを一本だけ見るつもりが、気づけば何本も見ていることがあります。
大人でもやめるのが難しいものを、小学生だけが自分の意志でコントロールできると考える方が無理があるのかもしれません。
だからといって、わが家ではゲームやYouTubeを禁止しているわけではありません。
むしろ普通にやります。
ただ、一つだけかなり意識していることがあります。
それは、
ゲームや動画以外にも、子どもが夢中になれるものを家の中に置いておくこと。
その一つが、本です。
わが家ではゲームには時間を決めています。
でも、
本は基本的に読み放題です。
本は好き。でも、動画やゲームのほうが楽しい
最近の調査を見ると、興味深いことが分かります。
博報堂教育財団こども研究所が2026年に小学4年生から中学3年生1,200人を対象に行った調査では、
69.3%の子どもが「本を読むことが好き」
と回答しています。
約7割です。
ところが、
「本を読むより動画やゲームのほうが楽しい」
と答えた子どもは、
76.5%。
本が嫌いなわけではない。
でも、それ以上に動画やゲームが面白い。
今の子どもたちが置かれている状況を、よく表している数字だと思います。

考えてみれば、かなり分の悪い勝負です。
本を読むには、自分で本を開かなければいけません。
文字を追う。
頭の中で場面を想像する。
ページをめくる。
そして物語が面白くなるところまで、自分で進んでいく必要があります。
一方、ショート動画は違います。
短い動画が次々に流れてくる。
面白くなければスワイプ。
すると、また次の動画が出てくる。
自分で「次は何を見よう」と考えなくても、アルゴリズムが次々に候補を出してくれます。
これと本が、子どもの自由時間を取り合っている。
そう考えると、
「本を読みなさい」
と言うだけでは、なかなか難しいのも当然なのかもしれません。
約7割の子どもが、週に1時間も本を読んでいない
同じ調査には、もう一つ気になる数字があります。
1週間の読書時間について、
「全く読まない」が17.4%。
「1時間未満」が55.2%。
合わせると、
72.6%の子どもが「全く読まない」または「週1時間未満」
という結果でした。

出典:博報堂教育財団こども研究所「子どもの読書調査 本、読んでる?」(2026年10月8日)
本を読むこと自体は嫌いではない。
でも、実際にはあまり読んでいない。
このギャップは面白いと思います。
本が嫌いだから読まないというより、
本以外に時間を使いたくなるものが、あまりにもたくさんある。
そんな時代なのかもしれません。
ショート動画は本当に子どもに悪いのか
ここまで書くと、
「やっぱりショート動画は子どもの脳に悪いのか」
と思うかもしれません。
ここは少し慎重に考えた方がよさそうです。
2026年に発表された、若者のショート動画利用について過去の研究をまとめたシステマティックレビューがあります。
42の研究、合計46,912人を対象に分析したもので、過剰で無秩序なショート動画の利用と、不注意や衝動性、ワーキングメモリ、自己調整、不安やストレス、依存的な利用などとの関連が報告されています。
ただし、ここは重要です。
このレビューに含まれた研究の88%は横断研究で、対象者の平均年齢も16.8歳でした。
つまり、
「小学生がショート動画を見ると脳が悪くなる」
とまで言える研究ではありません。
ショート動画を見るから集中力が低下するのか。
もともとそうした傾向がある人ほどショート動画を長く見るのか。
そこまでの因果関係は、まだ十分に分かっていません。
なので僕は、
「ショート動画は害悪だから全部禁止」
とまでは考えていません。
ただ、
大人ですら止め時を見失いやすいものを、小学生に無制限で渡すことには慎重でいたい。
とは思っています。
ゲームもYouTubeも悪者にしない。でも、無制限にはしない
では、わが家ではどうしているのか。
小学1年生と4年生の子どもがいますが、今のところ携帯電話は持たせていません。
家にテレビもありません。
こう書くと、
「かなり厳しい家庭なのかな」
と思われるかもしれません。
でも、ゲームもします。
YouTubeも見ます。
宿題など、やることをやったら、時間を決めてタブレットでMinecraftをしたり、Robloxで遊んだり、YouTubeを見たりしています。
僕はMinecraftやRobloxまで悪者にする必要はないと思っています。
自分で考えて建物を作ったり、試行錯誤したり、友達と一緒に遊んだり。
普通に面白いゲームです。
YouTubeにも面白い動画や勉強になる動画はたくさんあります。
だから、
「デジタルだからダメ」
とは考えていません。
わが家で意識しているのは、
それだけにならないようにすること。
ゲームには時間を決める。
でも、本は自由に読む。
そんなふうにしています。
ゲームには時間制限。でも、本だけは「読み放題」
わが家の本棚には、いろいろな本があります。
『かいけつゾロリ』シリーズ。
『おしりたんてい』シリーズ。
『つかめ!理科ダマン』シリーズ。
『科学漫画サバイバル』シリーズ。
いろんなジャンルの図鑑。
『ハリー・ポッター』シリーズ。
『ダレン・シャン』シリーズ。
子どもが興味を持ったものは、できるだけシリーズで揃えるようにしています。

別に、立派な文学作品ばかり読んでほしいわけではありません。
『かいけつゾロリ』でもいい。
漫画でもいい。
科学でもいい。
図鑑でもいい。
ファンタジーでもいい。
大事なのは、
「本って面白い」
という経験をしてほしいことです。
面白かった。
続きを読みたい。
次の巻も欲しい。
そう思ったときに、次の本がある。
僕はその環境をできるだけ作っておきたいと思っています。
「読ませる」のではなく「ハマる」環境を作る
先ほど紹介した博報堂教育財団こども研究所の調査には、家庭の読書環境についてのデータもありました。
本が「大好き」と答えた子どもの保護者では、
88.9%が「子どもの関心にあった本を用意している(いた)」
と回答しています。
全体では67.0%でした。
もちろん、
「親が本を用意したから、子どもが本好きになった」
と単純に因果関係を決めることはできません。
本好きな子どもだから、親も本を買うようになった可能性もあります。
ただ、
子どもが興味を持った瞬間に、本へアクセスできる環境を作っておく。
これは家庭でできることの一つだと思います。
わが家でシリーズものを揃えているのも、これに近い感覚です。
一冊読んで、
「面白かった!」
となったとき、次の巻が本棚にある。
すると、そのまま続きを読み始めることがあります。
僕は「本を読ませる」ことより、
本にハマった瞬間を邪魔しないこと
の方が大切なのではないかと思っています。
このあたりを考えるうえで面白かったのが、
『ハマるおうち読書』
という本です。
タイトル通り、
「子どもにどうやって本を読ませるか」
というより、
どうすれば家庭の中で子どもが本にハマれるのか
という視点で読める本でした。
僕自身、この考え方にはかなり共感しました。
「読書しなさい」
と言われて読む本より、
自分から、
「これ面白そう」
と手に取った本の方が強い。
だから、わが家でも本についてはなるべく選択肢を広くしておきたいと思っています。
テレビはない。でも映画は家族で見る
ちなみに、わが家にはテレビがありません。
でも、
映像作品を見せない家庭というわけではありません。
週末などには、本棚の上の壁を使ってプロジェクターで映画を見ます。
何を見るかは、子どもたちを中心に家族で相談して決めます。

これも僕の中では大切な違いです。
次々に流れてくる短い動画を一人で延々と見ることと、
「今日は何を見る?」
と家族で相談して一本の映画を選び、みんなで最後まで見ること。
どちらも「映像を見る」という行為ではあります。
でも、体験としてはかなり違うと思っています。
映画がきっかけで原作を読みたくなることもあります。
逆に、本を読んでから映画を見ることもあります。
だから僕は、
本 VS 映像
という考え方にも、あまりしたくありません。
本から映画へ。
映画から本へ。
ゲームから本へ。
いろいろな入口があっていいと思います。
家族旅行で『ハリー・ポッター』を聴いたら、帰宅後にまた本を開いた
そんなわが家で、最近ちょっと面白いことがありました。
家族旅行で車に乗っていたときのことです。
移動時間が長かったので、Audibleで『ハリー・ポッター』を流してみました。
子どもたちは、すでに本を読んでいます。
だから物語を知っています。
すると、
ものすごく熱中して聴くんです。
しかも、
「この後こうなるんだよ!」
「あ、この人はね……」
と、一生懸命僕たちに説明してくれます。
すでに読んだ物語だからこそ、次に何が起こるのか分かっている。
それが嬉しいらしい。
車の中で家族みんなで物語を聴きながら、子どもが得意そうに解説してくれる。
なかなか楽しい時間でした。
同じ移動時間でも、それぞれがゲームや動画を見るのではなく、一つの物語を家族で共有する時間になった。
僕には、それがとても嬉しかったです。
そして旅行から帰ってきて、ちょっと驚いたことがありました。
子どもが、
また『ハリー・ポッター』を第1巻から読み始めたんです。
これが僕にはすごく面白かった。
Audibleを聴いたから、紙の本を読まなくなった。
ではありませんでした。
むしろ逆です。
Audibleを聴かせたら紙の本を読まなくなる、ではなかった。
耳で物語にもう一度触れたことで、また本を開きたくなった。
「聴く」から「読む」へ。
そんな流れが自然に生まれたんです。
以前、大人の読書についての記事でも書きましたが、紙の本とオーディオブックは、どちらか一方を選ぶものではないのかもしれません。
読む → 聴く → また読む。
本との接点が増えれば、それでいい。
子どもが『ハリー・ポッター』を読み返している姿を見て、改めてそう思いました。
Audibleは「まだ一人では読めない本」への橋渡しになるかもしれない
子どもとAudibleの相性について、もう一つ感じていることがあります。
特に小学校低学年だと、
興味はあるけれど、自分一人ではまだ読めない本
があります。
知らない漢字が多い。
文章が長い。
ページ数が多い。
物語自体は理解できそうなのに、「文字を読む」というところで止まってしまう。
でも、
自分で文字を読めないことと、その物語を楽しめないことは同じではありません。
親が読み聞かせてもいい。
オーディオブックで聴いてもいい。
少し背伸びした物語でも、耳なら楽しめることがあります。
もちろん、
「Audibleを聴けば漢字が覚えられる」
とか、
「紙の読書と全く同じ効果がある」
と言いたいわけではありません。
そうではなく、
一人読みするには少し難しい本の世界へ入るための橋渡し
として、音声は使えるのではないかと思っています。
自力で文字を読めない。
だから、その物語を楽しめない。
そんなふうに決める必要はない。
まず耳から物語の世界に入って、その作品を好きになる。
そして、いつか自分で本を開く。
そんな順番があってもいいと思います。
わが家の『ハリー・ポッター』では、それに近いことが実際に起こりました。
子どもとAudibleを楽しむなら、最初から、
「勉強になるものを聴かせよう」
と考えなくてもいいと思っています。
すでに好きな本。
好きなシリーズ。
映画で知っている物語。
少し難しくて一人では読めない本。
そういうところから入ればいい。
わが家の場合は『ハリー・ポッター』でした。
知っている物語だからこそ、
「この後こうなる!」
と楽しめた。
そして、また本に戻った。
それで十分だと思っています。
Audibleには児童書や子どもと楽しめる作品もあるので、車での家族旅行など、
「本は開けないけれど、みんなの耳は空いている時間」
との相性はかなりいいと感じています。
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ゲームから遠ざけるより、本にも「ハマれる」環境を作りたい
ゲームを取り上げる。
YouTubeを禁止する。
ショート動画を見せない。
そうすれば、子どもが本を読むようになる。
そんなに単純な話ではないと思います。
本がつまらなければ、ゲームを禁止しても本は読みません。
だから僕がやりたいのは、
子どもの楽しみを減らすことではなく、楽しめるものを増やすこと。
マイクラもある。
ロブロックスもある。
YouTubeもある。
映画もある。
外で遊ぶこともある。
そして、
本もある。
その中で、
「今日はこれを読みたい」
と思ったときに、面白そうな本がそこにある。
その環境を作っておきたい。
子どもの時間を、全部アルゴリズムに渡したくない
「ドパガキ」という言葉は、かなり刺激的です。
正直、僕も最初に見たときは、
「すごい言葉が出てきたな」
と思いました。
でも、この問題を、
「最近の子どもは我慢ができない」
で終わらせてしまうのは違うと思います。
今の子どもたちは、生まれたときからスマホやタブレットがある世界で生きています。
次々に新しい動画をすすめてくれるサービスもある。
ゲームもある。
SNSもある。
大人ですら、その誘惑に勝つのは簡単ではありません。
だったら、
子ども本人の意志の強さだけに任せるのではなく、
家の中に別の選択肢を用意しておく。
それが親にできることの一つなのかもしれません。
わが家の場合、その一つが本でした。
本については、
「もう今日は読みすぎだからやめなさい」
とは基本的に言いません。
面白いなら読めばいい。
続きを読みたいなら読めばいい。
シリーズ全部読みたいなら読めばいい。
そして、ときには耳で聴いてもいい。
僕は、
子どもに本を読ませたいわけではありません。
もう少し正確に言うなら、
本に夢中になれる可能性を、子どもの中に残しておきたい。
そう思っています。
ゲームより面白い本に出会う日があってもいい。
YouTubeを忘れて物語に夢中になる日があってもいい。
家族旅行の車で聴いた物語がきっかけで、帰宅してから本棚の本をもう一度開く。
そんな時間を見ると、
「本を読みなさい」
と何度も言うより、
面白い本がいつでも手に取れる家にしておくことの方が大事なのかもしれない。
と思うのです。
子どもの時間を、すべてアルゴリズムに渡してしまわず、
自分から夢中になれるものに出会える余白を残しておく。
わが家ではこれからも、ゲームは禁止しない。
YouTubeも楽しむ。
映画も見る。
そして、
本は読み放題。
今のところ、それくらいがちょうどいいと思っています。
僕自身も、以前は「本を読む時間がない」と感じることがありました。
でも、Audibleを使うようになってから、車の移動時間や運動中など、これまで本を読めなかった時間にも物語を楽しめるようになりました。
子どもとの『ハリー・ポッター』も、その延長にあります。
「読む時間がないなら、聴くのはどうだろう?」
そんなことを考えた記事も書いています。


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