西尾潤さんの小説『マルチの子』。
この作品は書籍が発売された頃に一度読んでいて、「これは面白い」と強く印象に残っていました。それが最近、Amazon Audibleにあるのを発見。
普段、営業車で月に約4,000km走りながら、この2年で1,100時間以上Audibleを聴き込んでいるのですが、一度読んだ作品でも「これ、音声で聴いたら絶対面白い」と思って再生してみたところ――
めちゃくちゃ面白かった。
むしろ、紙で読んだとき以上にハマったかもしれません。
この記事では、『マルチの子』Audible版の感想・レビューとして、沢井真知さんのナレーションの魅力や、YouTubeチャンネル「新宿109 KENZO」が好きな人に刺さる理由について紹介します。
小説『マルチの子』とは?あらすじと生々しいリアリティ
『マルチの子』は、西尾潤さんによるマルチ商法(MLM)を題材にした小説です。
主人公はマルコ。あることをきっかけにマルチ商法の世界へ足を踏み入れ、そこから彼女の人生が大きく動き始めます。
「マルチ商法=友達を勧誘して商品を売る怪しいビジネス」
そんなイメージを持っている人も多いと思います。
でも、この作品が面白いのは、**「なぜそんなものにハマるの?」**という部分を、外側からではなく、ハマっていく人間の側から描いていること。
最初から「マルチにハマって人生をめちゃくちゃにしてやろう」と思って入る人なんていません。
きっかけがあって、人と出会って、話を聞いて、少し期待してしまう。そして気がつけば、その世界が日常になっている。
その過程がとにかく生々しい。
著者自身の経験もベースになっていることもあり、単なる啓発本ではなく、小説としてちゃんと面白い。文字で読んでも面白かったのですが、これがAudibleになると、人間同士の会話や妙な熱気まで耳から入ってきます。
新宿109 KENZOが好きな人なら『マルチの子』はかなり刺さる

僕が『マルチの子』をここまで楽しめた理由の一つが、新宿109 KENZOのYouTubeを見すぎていること。
KENZOの動画では、マルチや怪しい投資案件などを取り上げ、実際にセミナーへ潜入する企画があります。個人的にはこれが大好きです。
セミナーでは「成功」「自由」「稼ぐ」といった話が展開されている。そこにKENZOが現れて、届出や法律上の問題、説明の矛盾などを真正面から質問していく。
あれだけ勢いよく話していた会場の空気が一変する。
あの瞬間がたまらない。
だから『マルチの子』を読んでいると、**「KENZO、ここに来てくれ!」**と思ってしまう場面が何度もあります。
ちなみに、僕が勝手に『マルチの子』とKENZOを結びつけているわけでもありません。文庫版が発売された際には、本の帯にKENZOさんのコメントも掲載されていました。
そりゃ、KENZO好きの自分に刺さるわけです。
【Audible版感想】沢井真知さんの関西弁ナレーションがめちゃくちゃ良い
一度書籍で読んでいるのに、Audible版でもう一度ここまでハマった最大の理由。それが、ナレーター・沢井真知さんのナレーションです。
特に良かったのが、関西弁。
僕自身が関西人なので、ドラマや映画で不自然な関西弁が出てくると、結構気になります。
言葉そのものは合っている。でもイントネーションがなんか違う。
そうなると物語より、「いや、そのイントネーションちゃうねん……」のほうが気になってしまう。正直、ゾワッとすることすらあります。
ところが『マルチの子』のAudible版は、ほとんど違和感がない。
主人公のマルコをはじめ、竹田、仁川谷など、クセのある登場人物たちの関西弁が非常にいい。
単に関西弁が自然というだけではありません。声を聞いていると、**「こういう人、ほんまにおりそう」**と思えてくる。
文字で読んだときには頭の中で想像していた登場人物たちが、Audibleでは一気に立体的になりました。マルチ特有の妙なテンションや、人間関係の圧まで音になって伝わってきます。
また、倍速再生でも関西弁のニュアンスやイントネーションが崩れないのも大きなポイントでした。僕は普段1.5倍〜2倍速で聴くことが多いのですが、速度を上げても言葉の崩れや聞き取りにくさがなく、登場人物の掛け合いのグルーヴ感がそのまま楽しめます。
だから、まだ原作を読んでいない人はもちろん、一度紙で読んだ人にもAudible版をおすすめしたい。
僕にとっては「再読」というより、『マルチの子』をもう一度別の方法で体験したという感覚に近かったです。
『マルチの子』から見えてくる、マルチと「自爆」の怖さ

マルチにハマると、友達にアタックする。親族にもアタックする。周囲から止められても続ける。
そして商品が思うように売れなければ、自分で購入する。
いわゆる「自爆」です。
外から見ていると、**「いや、そこで気づくやろ!」**と思います。
でも、なぜ自分で商品を買ってまで続けてしまうのか。
その背景の一つとして、マルチの世界でよく見かけるのが「ランク」の存在です。
一定の売上や組織実績など、定められた条件を達成するとランクが上がる。上位ランクになることで、報酬体系やボーナスなどが変わる仕組みを採用しているところもあります。
そして、そのランクにつけられている名前がまたすごい。
サファイア、プラチナ、ダイヤモンド……。
なんとも香ばしいタイトルが並びます。
「あと少しで次のランクに上がれる」
「今月この数字を達成すればランクを維持できる」
「上のランクに行けば、もっと報酬が増える」
そんな状況になったとき、目の前に「あと少し」という数字をぶら下げられたらどうなるか。
本来なら「売れなかった」で終わるはずの商品を、
「あと○万円分だけ自分で買えば達成できる」
と考えてしまう。
もちろん、すべてのマルチ商法で同じ制度が採用されているわけではありません。
ただ、ランクや報酬、成功者としての肩書きが目の前にぶら下がることで、「商品を買う」という行為が単なる出費ではなく、**「成功するための投資」**のように見えてしまう怖さがあります。
そして一度上がったら、今度は落ちたくない。
せっかく手に入れたランクを維持したい。ここまで使ったお金も時間も無駄にしたくない。自分を誘ってくれた人にも「やっぱり無理でした」と言いたくない。
そうやって、
成功したい。
認められたい。
ランクを上げたい。
ランクを落としたくない。
今まで使った時間とお金を無駄にしたくない。
いろいろな感情が絡み合って、どんどん引き返せなくなっていく。
外から見れば「自分で買って売上を作って、それで儲かったと言えるの?」と思う。
でも、その世界の中にいる本人にとっては、
「ここを乗り越えれば次に行ける」
になっているのかもしれません。
だから、**「マルチに騙される人=頭の悪い人」**という単純な話では片付けられない怖さがあります。
なぜやめないのか。なぜさらにお金を使ってしまうのか。なぜ周囲から止められると、逆に「この人たちは分かっていない」と思ってしまうのか。
『マルチの子』は、その心理を物語として体験させてくれます。
本当に怖いのは、マルチの世界が今も終わっていないこと
そして、この作品を今聴いて改めて怖いと思ったことがあります。
『マルチの子』が世に出てから時間が経っているのに、マルチや怪しい儲け話の世界はなくなっていない。
ある組織が問題になって消えても、また違う名前のものが出てくる。扱う商品が変わる。サービスが変わる。暗号資産など、その時代に注目されているものが利用されることもある。
それでもKENZOの動画をずっと見ていると、**「あれ、これ前にも見たような……」**と思うことがあります。
KENZOのチャンネルでは、ERA、マーケットピーク、ディバインなど、さまざまな案件や組織が取り上げられてきました。
もちろん、それぞれ事情は異なるので一括りにはできません。ただ、いろいろな動画を見続けていると、人を引き込むときに使われる言葉や空気に、似たものを感じることがあります。
「成功」「自由」「仲間」「夢」。
そして、「人生を変えたいと思わない?」「今のままでいいの?」といった言葉。
そうやって商品やサービスだけではなく、その人の将来や人生の不安にまで入り込んでくる。
名前が変わっても、人間の「成功したい」「お金が欲しい」「認められたい」という気持ちは変わりません。
だから、この手の話もなくならないのかもしれません。
KENZOを見すぎて、服装だけでマルチを疑うようになった
ちなみに僕の場合、KENZOの動画を見すぎた弊害もあります。
街中でちょっとそれっぽい雰囲気の人を見ると、**「……マルチの人かな?」**と勘繰ってしまうようになりました。
服装だけで。
もちろん、服装だけでそんなことが分かるわけがありません。
完全にKENZOの見すぎです。
でも、それくらいKENZOの動画を見てから『マルチの子』を聴くと、この物語が「小説の中だけの特殊な世界」とは思えなくなります。
どこか現実と地続きなんですよね。
そこが面白くもあり、怖くもあります。
大切なお金をマルチや詐欺に奪われてはいけない
ここは大前提として書いておきたい。
自分の大切なお金を、マルチや詐欺に奪われてはいけない。
数万円でも、数十万円でも、もっと大きなお金でも、自分が働いて稼いだ大切なお金です。誰かが持ってきた「儲かる話」に簡単に差し出していいものではありません。
そして失う可能性があるのは、お金だけではない。友達や家族など、それまで築いてきた人間関係まで壊してしまう可能性があります。
だから僕は、『マルチの子』を単純に「マルチを題材にした面白い小説」としてだけでなく、反面教師としても楽しめる作品だと思っています。
実際にマルチの世界へ飛び込まなくても、小説なら安全な場所からその世界を疑似体験できます。
「自分は絶対に騙されない」という人にも聴いてほしい
「いや、自分は大丈夫」「そんな怪しい話には絶対に引っかからない」
そう思っている人も多いでしょう。僕もそう思っています。
でも、知らない人からいきなり「100万円払えば絶対に儲かります!」と言われるだけなら、誰だって警戒します。
では、相手が信頼している友達だったら?
自分が仕事や将来に悩んでいるタイミングだったら?
そこで自信に満ちた人から、**「人生を変えられる」**と言われたら?
『マルチの子』を聴いていると、人がマルチの世界へ入る入口は、自分が想像しているほど分かりやすいものばかりではないのかもしれないと思わされます。
だからこそ、一度物語の中で体験しておく。
それだけでも意味があると思います。
Audible版『マルチの子』はこんな人におすすめ
Audible版『マルチの子』は約14時間。決して短い作品ではありません。
でも、その約14時間でマルチの世界を安全な場所から疑似体験できると考えると、なかなか面白い。
特にこんな人にはおすすめです。
- 新宿109 KENZOのYouTubeチャンネルが好き
- MLM・マルチ商法を題材にした作品に興味がある
- 過去にマルチを経験したことがある
- マルチ商法が嫌い
- 『マルチの子』を書籍で読んで面白かった
- Audibleで聴き応えのある小説を探している
- 関西弁のナレーションにうるさい
特に、KENZOの動画で怪しいセミナーへの突撃が始まった瞬間、「来た来た来た!」とテンションが上がる人。
たぶん、この作品はかなり好きだと思います。
あわせて読みたい:重厚な人間ドラマや社会の裏側を描くおすすめAudible作品
『マルチの子』のような、人間のリアルな欲望や組織の暗部を描いた作品、重厚な人間ドラマが好きな方には、以下のAudibleレビュー記事もおすすめです。
特に、昭和のビジネス界や組織の波乱を描いた山崎豊子さんの『不毛地帯』は、圧倒的なスケール感とナレーションの迫力で、車移動中や作業中のリスニングに最高の作品です。

まとめ:面白い。でも「自分のお金は自分で守ろう」とも思わせてくれる

『マルチの子』は、書籍で読んだときも面白かった。Audibleで聴いても、やっぱり面白かった。
むしろ沢井真知さんのナレーションによって登場人物たちが声を持ったことで、僕は紙で読んだとき以上にハマりました。
特に関西弁。関西人の自分が聴いても違和感がほとんどなく、マルコ、竹田、仁川谷といったクセのある人物たちが本当にどこかに存在しているように感じられます。
そして久しぶりに『マルチの子』の世界に触れて、改めて思いました。
マルチの話って、昔話になっていないんですよね。
名前は変わる。商品も変わる。時代も変わる。
それでも、人間の「成功したい」「お金が欲しい」「認められたい」という気持ちは、そう簡単には変わらない。
だからこそ『マルチの子』は、今聴いても面白い。
最高に面白いエンタメとして楽しみながら、マルチの世界を疑似体験する。そして聴き終わったあと、**「自分の大切なお金と人間関係は、自分で守らないとな」**と少しでも思えたら、それもこの作品の価値なのではないでしょうか。
一度原作を読んでいる人にも、KENZOの動画が好きな人にも、そして「自分は絶対に騙されない」と思っている人にもおすすめしたいAudible作品です。
現在Audibleでは、対象者向けのキャンペーンが実施されています。無料体験や期間限定キャンペーンなど、利用できる内容はアカウントによって異なる場合がありますので、登録前に公式サイトでご確認ください。
\ 初めてなら30日間無料で聴き放題 /
※無料体験・キャンペーンの適用条件、料金、自動更新などの詳細は、登録前にAudible公式サイトでご確認ください。

コメント