山崎豊子の『沈まぬ太陽』をAudibleで聴きました。
紙の本だと全5巻。
「読み切れるだろうか」と少し構えてしまうようなボリュームですが、Audibleだからこそ挫折することなく、重厚な世界にどっぷり浸かりながら最後まで聴き切ることができました。
山崎豊子らしい重厚な人間ドラマ。
組織の中で渦巻く出世欲や嫉妬。
自分の信念を貫く主人公・恩地元(おんち はじめ)の生き方。
そして、実際の航空事故を強く想起させる重いテーマ。
決して軽い作品ではありません。
でも、今だからこそ聴く価値がある作品だと感じました。
山崎豊子作品の面白さは「男の嫉妬」にある

僕が山崎豊子作品を面白いと感じる大きな理由のひとつが、男の嫉妬の描き方です。
これは『沈まぬ太陽』に限りません。
『白い巨塔』でも『不毛地帯』でも、仕事や出世、評価、立場をめぐって、人間の感情が少しずつ歪んでいきます。
相手の能力を認めているからこそ嫉妬する。
自分より評価される相手が許せない。
自分の立場を脅かす相手を、組織の力を使って押さえつけようとする。
そういう感情が、ものすごく生々しく描かれています。
世間では「女の嫉妬は怖い」と言われることがありますが、山崎豊子作品を読んでいると、むしろ男の嫉妬の方がずっとえぐいんじゃないかと思ってしまいます。
仕事や出世、プライドが絡むからこそ、その嫉妬が本人同士だけでは終わらない。
周囲を巻き込み、組織を動かし、ときには人生そのものを変えてしまう。
『沈まぬ太陽』でも、その怖さがしっかり描かれています。
でも、だからこそ面白い。
人間の弱さや醜さをここまで描けるから、山崎豊子作品はただの企業小説や社会派小説ではなく、強烈な人間ドラマになるんだと思います。
山崎豊子作品で、権力や出世をめぐる人間の欲望をさらに濃く味わいたいなら『白い巨塔』もおすすめです。

恩地元の生き方に熱くなる
この作品で特に印象に残ったのが、主人公・恩地元の生き方です。
恩地は国民航空の労働組合委員長として、労働環境の改善を求めて経営陣と激しく対立します。
自分が正しいと思うことを簡単には曲げない。
その姿勢によって会社から疎まれ、カラチ、テヘラン、ナイロビなど、本人の意思とはかけ離れた海外赴任を次々と命じられます。
それでも、自分の芯を手放さない。
この恩地の姿を見ていると、働く人間として、
「自分も一本芯を持って生きないといけないな」
と思わされます。
もちろん現実の仕事では、何でも自分の意見を押し通せばいいわけではありません。
でも、周囲に流されるだけではなく、
「自分は何を大切にして働くのか」
というものは持っていたい。
恩地の人生を追っていると、
「ちょっとやそっとのことで、くじけていられるか」
そんなエールをもらっているような気持ちになります。
『不毛地帯』や『大地の子』でもそうですが、山崎豊子は、過酷な環境の中でも自分なりの信念を持って生きる人間を描くのが本当にうまいです。
恩地元とはまた違う強さを持つ主人公として、『大地の子』の陸一心も非常に印象に残りました。


航空事故の描写は重い。それでも聴く意味がある
『沈まぬ太陽』には、1985年の日本航空123便墜落事故を強く想起させる航空機事故が描かれています。
作中では航空会社名や人物名などは実在のものとは変えられています。
それでも、聴いていると現実との距離がかなり近く感じられます。
僕自身、この事故をリアルタイムで記憶している世代ではありません。
だから作品を聴いている途中で、
「実際はどうだったんだろう」
と気になり、当時の事故やその背景について自分なりに調べました。
そこで改めて感じたのが、山崎豊子の取材力のすごさです。
事故そのものだけではなく、会社のあり方、国との関係、組織の動き、現場と上層部の距離感まで、非常に緻密に描かれています。
フィクションではありますが、現実を強く意識して書かれていることが伝わってきます。
事故の場面や遺族に関する描写は、Audibleで耳から入ってくるぶん、正直かなりしんどいところもありました。
でも、目を背けたくなる内容だからこそ、こういう出来事があったことを知る意味もあるのだと思います。
今の社会は、本当にそこまで変わったのか
当時のことを調べながら聴いていて、もう一つ感じたことがあります。
それは、
「日本の社会って、実は思っているほど変わっていないのかもしれない」
ということです。
時代は変わりました。
技術も制度も変わっています。
それでも、組織の都合が優先される。
現場と上層部で感覚にズレがある。
責任の所在が曖昧になる。
そういった構図は、今の社会にもどこか通じるものを感じます。
もちろん、当時と今を単純に同じものとして見ることはできません。
でも、昔の話として片づけられないところが、この作品のすごさだと思います。
『沈まぬ太陽』を聴きながら飛行機に乗って感じたこと

僕が『沈まぬ太陽』をAudibleで聴いていた時期、ちょうど仕事の出張で飛行機に乗る機会がありました。
作品を聴きながら空港へ行き、実際に飛行機に乗る。
これはかなり複雑な体験でした。
普段なら当たり前のように空港へ行き、時間になれば飛行機が飛ぶ。
大きなトラブルもなく目的地に着く。
でも、『沈まぬ太陽』を聴いたあとでは、その「当たり前」の見え方が少し変わりました。
定時に飛行機が運航すること。
大きな事故が起きないこと。
ストなどで会社が機能しなくなることなく、多くの人が普通に移動できること。
安全を守る仕組みがあること。
今の自分たちにとって当たり前に見える環境も、最初からそこにあったわけではありません。
誰かが問題を指摘し、誰かが現場で踏ん張り、誰かが制度を変え、ときには組織とぶつかりながら作り上げてきたものなんだと思います。
今ある環境は、過去に誰かが戦って作り上げたもの。
そう考えると、普段何気なく乗っている飛行機の見え方まで変わりました。
もちろん『沈まぬ太陽』は小説です。
それでも、この作品を聴いたことで、今ある安全や便利さを「当たり前」と思わない感覚を少し持てた気がします。
普段は仕事の車移動中にAudibleを聴くことが多いです。
→ Audibleは車の運転中におすすめ?月4,000km走る営業職が2年間使った感想と注意点
全5巻・約63時間の長編だからこそAudibleと相性がいい

『沈まぬ太陽』は全5巻。
Audible版の再生時間を合計すると、約62時間45分あります。
- 1巻「アフリカ篇・上」:10時間16分
- 2巻「アフリカ篇・下」:12時間57分
- 3巻「御巣鷹山篇」:13時間41分
- 4巻「会長室篇・上」:14時間21分
- 5巻「会長室篇・下」:11時間30分
数字だけ見ると、かなりの長編です。
でも、Audibleには再生速度を自由に変えられるという大きなメリットがあります。
僕が個人的におすすめしている1.7倍速なら、約62時間45分の『沈まぬ太陽』も約36時間55分で聴くことができます。
約63時間が約37時間。
これなら通勤や車での移動、家事などの時間に少しずつ聴けば、かなり現実的な長さになってきます。
僕自身、紙の本で全5巻を読もうと思うと、途中で少し構えてしまったかもしれません。
でもAudibleなら、普段なら本を開けない移動時間でも物語を進められます。
ナレーションを担当しているのはMiCさん。
1.7倍速でも聴き取りやすく、僕の場合は内容が入ってこないという感覚もありませんでした。
人物も多く、企業や政治、組織内部の話も複雑です。
それでも物語そのものの力が強いので、先が気になってどんどん聴いてしまいます。
これは『不毛地帯』を聴いたときにも感じました。
→ 『不毛地帯』全5巻・約88時間をAudibleで聴いた感想
山崎豊子のような長編小説こそ、Audibleとの相性がいいのかもしれません。
紙の本だとボリュームを見ただけで少し構えてしまう作品でも、耳で少しずつ聴いていけば最後までたどり着ける。
僕にとって『沈まぬ太陽』は、その良さを改めて実感した作品でした。
Audibleの再生速度については、1.5倍・1.7倍・2倍を実際に使った感想をこちらの記事にまとめています。
→ Audibleのおすすめ再生速度は?1.5倍・1.7倍・2倍を1,000時間使って分かったこと
Audibleで『沈まぬ太陽』を聴く
『沈まぬ太陽』はAudibleで全5巻配信されています。
全5巻を紙で読むのは少しハードルが高いという人にこそ、音声で少しずつ聴く方法は相性がいいと思います。
MiCさんのナレーションが自分に合うか確認してから始めるのがおすすめです。
👉まずはサンプル音声でMiCさんのナレーションを確認してみてください
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ドラマ版・映画版と比べても面白い
『沈まぬ太陽』は映像化もされています。
2016年のWOWOWドラマ版では上川隆也さん、2009年の映画版では渡辺謙さんが恩地元を演じています。
どちらも重厚な作りで、原作とはまた違った面白さがあります。
映像になることで、人間関係や会社の空気感、恩地が置かれている状況がより直感的に分かります。
一方、Audibleで原作を聴くと、映像では描き切れない登場人物の心理や組織の細かな動きまで、じっくり入ってきます。
ドラマや映画を見てから原作を聴くのもいいですし、原作を聴いてから映像作品を見るのも面白いと思います。
両方に触れることで、『沈まぬ太陽』という作品をより深く味わえるはずです。
まとめ|『沈まぬ太陽』は今だからこそ聴く価値がある
『沈まぬ太陽』を聴き終えて、改めて思いました。
やっぱり山崎豊子はすごい。
圧倒的な取材力。
巨大組織のリアルな描写。
人間の欲や弱さ。
そして、僕が山崎豊子作品を面白いと思う大きな理由でもある、男の嫉妬の生々しさ。
その一方で、どんな状況でも自分の生き方を貫こうとする人間の強さも描かれています。
『不毛地帯』『大地の子』『白い巨塔』など、それぞれに忘れられない人物や場面がありますが、『沈まぬ太陽』も山崎豊子作品を語るうえで欠かすことのできない一作だと思います。
決して軽い作品ではありません。
聴いていてつらくなる場面もあります。
それでも、恩地元の生き方を追っていると、
「自分はどう働くのか」
「何を大切にして生きるのか」
と考えさせられます。
そして、今ある安全や便利な環境も、最初から当たり前だったわけではない。
誰かが声を上げ、戦い、積み上げてきたものの上に自分たちは生きている。
そんなことまで考えさせてくれる作品でした。
全5巻、通常速度なら約63時間。
それでも1.7倍速なら約37時間です。
長編だからと敬遠していた人にこそ、Audibleで挑戦してみてほしい作品です。
Audibleをまだ使ったことがない方へ
僕はAudibleを約2年間使い、これまで1,000時間以上聴いてきました。
『沈まぬ太陽』のような長編に挑戦しやすくなったことも、Audibleを使って良かったことのひとつです。
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実際に1,000時間以上使って感じたメリット・デメリットについては、こちらの記事にまとめています。


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