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Audibleで海外文学を聴くなら「翻訳者」にも注目|アトロク日本翻訳大賞から考えた本の選び方

Audibleで海外文学を聴くなら翻訳者にも注目。アトロクで特集された日本翻訳大賞から本の選び方を考える

最近、YouTubeの『本ツイ!-本屋ついてって1万円あげたら何買うの?-』を見ていました。

西加奈子さんが出演していた回で、翻訳家の岸本佐知子さんの仕事について熱弁している場面がありました。

西さん自身が作家だからこそなのか、翻訳という仕事に対するリスペクトがすごく伝わってきて、それが妙に印象に残りました。

それを見ながら思い出したのが、僕が長年聴いているラジオ番組「アフター6ジャンクション(通称:アトロク)」の日本翻訳大賞特集です。

アトロクでは毎年のように日本翻訳大賞を取り上げています。

僕はこの特集がかなり好きです。

とはいえ、昔から翻訳に詳しかったわけではありません。

以前は「外国語で書かれた文章を、日本語に直す仕事」くらいの認識だったと思います。

もちろん、それだけでも大変な仕事だとは思っていました。

でも、翻訳家の人たちが実際に翻訳について話しているのを聞いていると、それでは全然足りないことが分かってきます。

一つの言葉をどう訳すのか。

登場人物の口調をどうするのか。

原文にある少し変わった感じを、日本語にも残すのか。

それとも、日本語として自然に読めることを優先するのか。

たった一文にも、自分が思っていた以上にたくさんの選択があります。

そして最近、あらためて思いました。

翻訳という視点からAudibleを聴いてみると、海外文学はもっと面白くなるのではないでしょうか。

今回は、そんなことについて書いてみます。

目次

「この文章いいな」と思ったとき、その日本語を書いたのは誰なのか

海外小説を読んでいると、

「この文章、いいな」

と思うことがあります。

会話のテンポが気持ちよかったり、妙におかしかったり、たった一行なのにずっと頭に残ったりします。

そのとき僕は、何となくその作家の文章を読んでいるつもりになっています。

もちろん、それは間違いではありません。

物語を書いたのは原作者ですし、作品の世界や登場人物を作ったのも原作者です。

でも、日本語で読んでいる以上、実際に自分の目の前にある日本語を選んだのは翻訳者でもあります。

たとえば英語の「I」を「私」と訳すのか、「僕」と訳すのか。

敬語にするのか。

かなりくだけた言葉にするのか。

少し変わった言い回しを、その違和感ごと残すのか。

そういう一つひとつの判断によって、僕たちが受け取る人物像や文章のリズムも変わってきます。

アトロクの日本翻訳大賞特集を聴いていて面白いのは、普段の読書では通り過ぎてしまう、こうした部分の話が出てくることです。

「そんなところまで考えて訳しているのか」

と驚くことが何度もあります。

翻訳された海外文学を読んでいるとき、自分は原作者ひとりの文章を読んでいるわけではありません。

そのことを少し意識するようになってから、海外文学の見え方が変わってきました。

Audibleでは、そこにもう一人加わります

そしてAudibleで海外文学を聴く場合、そこにさらにもう一人加わります。

ナレーターです。

原作者が文章を書きます。

それを翻訳者が日本語にします。

さらに、その日本語をナレーターが声にします。

そして最後に、僕たちが耳で受け取ります。

原作者 → 翻訳者 → ナレーター → 聴き手

こうして並べてみると、一冊の本が自分のところに届くまでに、けっこう多くの人が関わっています。

海外文学が原作者から翻訳者、ナレーターを通してAudibleの聴き手に届く流れ

紙の本なら、登場人物の声や文章のテンポを、ある程度自分の頭の中で作ります。

Audibleの場合は、そこにナレーターの解釈も加わります。

どこで間を取るのか。

どの言葉を少し強く読むのか。

登場人物をどんな声で演じるのか。

ほんの少しの違いで、人物の印象まで変わることがあります。

だからAudibleで海外文学を聴くというのは、

「海外の小説を日本語で聴く」

というだけではなく、

「翻訳者が作った日本語を、ナレーターの声を通して聴く」

ことでもあるのだと思います。

そう考えると、これまで何となく見ていた「翻訳」と「ナレーター」の名前が、急に気になってきます。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を聴いて、あらためて思ったこと

今回、翻訳について考えていて思い出したAudible作品があります。

アンディ・ウィアーの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』です。

僕は先に映画を観て、そのあとAudibleで原作を聴きました。

普段、それほどSF小説を読むタイプではないのですが、この作品はかなり夢中になって聴きました。

日本語版の翻訳は小野田和子さん。

Audible版の朗読は井上悟さんです。

実際に聴いていたときは、ストーリーの面白さや井上悟さんの朗読に意識が向いていて、「翻訳」という部分まではあまり考えていませんでした。

でも今回、翻訳についてあらためて考えてみると、

「自分が面白いと思って聴いていたこの日本語は、小野田和子さんが作ったものでもあるんだな」

という、当たり前のことに気づきました。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』には科学的な説明もかなり出てきます。

専門的な内容も多いのですが、それでも物語の勢いが止まらず、どんどん先を聴きたくなりました。

そこには原作者のアンディ・ウィアーの力があるのはもちろんですが、その面白さを日本語として届ける翻訳の力もあります。

さらにAudibleでは、その日本語を井上悟さんの声で聴いています。

アンディ・ウィアーが書いた物語。

小野田和子さんが日本語にした文章。

井上悟さんの朗読。

この三つが重なって、僕が聴いた『プロジェクト・ヘイル・メアリー』になっています。

これまでAudibleについて書くときは、

「ナレーションが聴きやすい」

「物語に入り込みやすい」

ということはよく意識していました。

でも、その一つ前に「翻訳」という仕事があることまでは、あまり意識していませんでした。

今回の記事を書きながら、そこにあらためて気づきました。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』をAudibleで実際に聴いた感想はこちら
→ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』Audible版レビュー

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日本翻訳大賞は、海外文学を探す入口として面白い

そこで、もう一度アトロクの話に戻ります。

僕が日本翻訳大賞を知ったのも、たぶん「アフター6ジャンクション」がきっかけだったと思います。

毎年、翻訳家の方たちがその年の作品について話すのですが、これが面白いです。

単純に、

「この小説が面白かった」

というだけではありません。

文章をどう日本語にしているのか。

その翻訳のどこが面白いのか。

原文の特徴をどう日本語に移しているのか。

そんな話まで出てきます。

普段、自分が本を読んでいるだけでは、なかなか気づけない視点です。

本を選ぶとき、多くの場合は作者名やタイトル、あらすじを見ると思います。

僕もそうです。

でも、日本翻訳大賞の特集を聴いていると、

翻訳者も本を選ぶための入口になる

ということが分かってきます。

「この人が訳しているなら、ちょっと読んでみたい」

そんな選び方です。

日本翻訳大賞の受賞作や候補作には、自分ではなかなか見つけられなかった本も多くあります。

有名な作品だけを追うのではなく、自分の知らなかった海外文学に出会う入口として、この賞をチェックしてみるのも面白いと思います。

僕自身、アトロクを聴いていなければ、翻訳という仕事をここまで意識することはなかったかもしれません。

過去の放送分をYouTubeで聴くことができますので、ぜひチェックしてみてください。

翻訳者本人の声で聴けるAudibleもあります

Audibleには、今回のテーマにかなりぴったりな作品もあります。

柴田元幸さん編訳の『アメリカン・マスターピース 古典篇』です。

ホーソーン、ポー、メルヴィルなど、アメリカ古典文学の短編を柴田元幸さんが選び、翻訳したアンソロジーです。

面白いのは、Audible版では柴田元幸さん自身が朗読していることです。

つまり、

翻訳した本人が、自分でその日本語を読んでいます。

これは考えてみると、かなり特別です。

普通の海外文学のAudibleなら、

原作者 → 翻訳者 → ナレーター

という流れになります。

ところが、この作品では翻訳者とナレーターが同じ人です。

翻訳するときに、どんな文章のリズムを思い描いていたのか。

どこで間を取るのか。

どういう音として日本語を捉えているのか。

もちろん、実際の翻訳作業で朗読まで想定しているのかは分かりません。

それでも、

「翻訳した人自身の声で、その翻訳を聴く」

というのは、Audibleならではの面白い体験です。

今回のテーマを考えながら、僕もあらためて聴いてみたい作品です。

「作者買い」だけではなく「訳者買い」も面白そうです

音楽が好きな人なら、

「このプロデューサーが関わっているなら聴いてみよう」

ということがあると思います。

映画なら、監督だけではなく、脚本家や撮影監督の名前を追っている人もいます。

それなら本も同じで、翻訳者を入口にして作品を探してみてもいいのかもしれません。

岸本佐知子さん。

柴田元幸さん。

斎藤真理子さん。

気になる翻訳者が見つかったら、その人が訳した作品をたどってみる。

すると、それまで自分では手に取らなかった作家や作品に出会えるかもしれません。

海外文学は、少し敷居が高そうに感じることもあります。

知らない作家の、知らない国の小説となると、

「面白そうだけど、何から読めばいいんだろう」

となることもあります。

そんなとき、

「この翻訳者なら読んでみたい」

という一本の糸があると、選びやすくなります。

僕も今まで「作者買い」はしてきましたが、「訳者買い」はほとんど意識したことがありませんでした。

でも、これはかなり面白い本の探し方かもしれません。

Audibleは、翻訳された文章の「音」を感じやすい

紙の本とAudibleのどちらがいい、という話ではありません。

僕はどちらも好きです。

ただ、今回あらためて考えてみると、翻訳された文章を「音」として感じられるのは、Audibleの面白さの一つなのだと思います。

文章にはリズムがあります。

短い文章が続くのか。

長い文章が流れるようにつながっていくのか。

会話がテンポよく続くのか。

あえて少し引っかかるような日本語になっているのか。

目で読んでいると気づかなかったことが、声になることで急に分かる場合があります。

「この文章、耳で聴くとこんなリズムだったのか」

と思うことがあります。

もちろん、それは翻訳者だけの仕事ではありません。

ナレーターの力も大きいです。

だからこそ面白いのだと思います。

翻訳者が作った日本語と、ナレーターの声がうまく重なったとき、紙で読むのとはまた違った作品になります。

Audibleで海外文学を探すとき、翻訳者の名前も見てみたい

西加奈子さんが『本ツイ!-本屋ついてって1万円あげたら何買うの?-』で岸本佐知子さんの仕事について話しているのを見たところから、ずいぶん話が広がりました。

でも、こういうふうに、それまで別々だったものが自分の中で急につながる瞬間が僕はけっこう好きです。

西加奈子さん。

岸本佐知子さん。

アフター6ジャンクション。

日本翻訳大賞。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。

そしてAudible。

どれも以前から知っていたものですが、

「Audibleで海外文学を聴くとき、翻訳者を意識してみる」

というところで一本につながりました。

これまでAudibleで本を探すとき、僕はほとんど作者とタイトルしか見ていませんでした。

でも、これからは海外文学なら訳者名も見てみようと思います。

気に入った作品があったら、次は同じ作者ではなく、同じ翻訳者から探してみる。

そんな選び方も面白そうです。

海外文学は、遠い国で誰かが書いた物語です。

それを日本語にして、自分たちのところまで運んでくれる人がいます。

Audibleなら、さらにその日本語を声にして届けてくれる人がいます。

普段はどうしても作者にばかり目が行きます。

でも、その途中にいる人たちの仕事を少し意識するだけで、一冊の本が今までより立体的に見えてきます。

次にAudibleで海外文学を探すときは、作品名や作者名だけではなく、「翻訳」のところも少し見てみてください。

そこから、次に聴きたい一冊が見つかるかもしれません。


Audibleで気になる海外文学を探してみる

今回紹介した作品以外にも、Audibleにはさまざまな海外文学があります。

作品を探すときに、作者名だけではなく翻訳者やナレーターの名前もチェックしてみると、今までとは違った本の見つけ方ができるかもしれません。

Audibleの聴き放題対象作品は変更されることがあるので、気になる作品がある場合は現在の配信状況を確認してみてください。

※Audibleを楽しむコツを詳しく知りたい方はこちら


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この記事を書いた人

地方で暮らすアラフォー男性。

仕事や日常の中で見つけた「これは良かった!」という情報を、実体験ベースで発信しています。

最近はAudible(オーディブル)での読書・インプットにハマり、実際に聴いた本のレビューや、忙しい社会人のための「ながら読書」についての記事を中心に更新中。

映画、音楽、子育て、暮らしなど、気になったことも幅広く。
自分が実際に試して、良いと思った情報を、誰かの役に立つ形で届ける。

そんなブログを目指しています。

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