ラジオを聴いていて、本気で腹を抱えて笑ったことはありますか?
僕はあります。
後にも先にも、あんなにラジオの前で声を出して笑ったのは、あの時が初めてだったと思います。
TBSラジオ『アフター6ジャンクション(通称:アトロク)』に、小説家・ミュージシャンの町田康さんがゲスト出演した回です。
番組内で町田さんが朗読したのは、池澤夏樹=個人編集『日本文学全集』に収録された、町田康訳『宇治拾遺物語』。
「こぶとりじいさん」の原型になった話などを、町田さん自身が朗読していました。
これが、もう、とんでもなく面白かったんです。
町田さんの関西弁。
独特のリズム。
妙に理屈っぽくて、とにかくよくしゃべる登場人物たち。
昔の説話を聴いているはずなのに、出てくる人たちが妙に生々しい。
欲深かったり、見栄っ張りだったり、調子に乗ったり。
「こういう人、今でも普通にいるよな」
と思えてきます。
あまりのくだらなさと面白さに、スタジオも大笑い。
聴いていた僕も、涙が出るくらい笑いました。
たしかこの時、
「古典って、こんなに面白いのか」
と初めて思った気がします。
それまで僕の中にあった「古典=難しいもの」というイメージが、一気に崩れました。
※このときの町田康さんの朗読は、TBS PodcastのYouTubeでも聴くことができます。町田節を未体験の方は、ぜひ一度聴いてみてください。

そして、一度あの町田節を知ってしまうと、ほかの作品も気になってきます。
「ほかの古典を町田康が訳したら、いったいどうなるんだろう」
そんなところからたどり着いたのが、
町田康『口訳 古事記』
でした。
しかもAudibleにある。
これは聴いてみるしかない。
ということで、今回はAudible版で聴いてみました。
『口訳 古事記』で「古事記=難しい」が完全に崩れました
『古事記』といえば、日本最古の歴史書。
イザナギ、イザナミ、アマテラス、スサノオ……。
名前くらいは知っているけれど、
「神様がいっぱい出てくる難しい話」
という印象を持っている方も多いと思います。
僕もまさにそうでした。
学校で習った記憶はある。
でも、どんな話だったかと聞かれると、ほとんど説明できません。
そんな僕でも、『口訳 古事記』は普通に楽しめました。
というより、
こんな話だったのか。
と驚きました。
神様たちが、びっくりするほど人間臭いんです。
怒る。
嫉妬する。
欲を出す。
意地を張る。
言い訳する。
そして、とにかくよくしゃべる。
「いや、神様なのにそれでいいの?」
と思うことが何度もあります。
でも、それが面白い。
町田康の言葉を通すことで、何千年も前の神話が急にこちら側へ近づいてきます。
立派な神様たちのありがたい話を聞いているというより、
「なんか、とんでもない人たちが大騒ぎしているな」
という感じです。
気づけば、
「このあと、どうなるんだろう」
と続きを聴いています。
古事記を理解しよう。
日本神話を勉強しよう。
そんなふうに構えていたら、僕はたぶん途中で挫折していたと思います。
でも『口訳 古事記』は違いました。
まず、話として面白い。
そして、笑える。
そこから古事記に入れる。
僕には、この順番がすごく合っていました。
町田康本人の朗読ではありません。でも、これがかなりいい
ここは最初に知っておいた方がいいと思います。
Audible版『口訳 古事記』を朗読しているのは、町田康さん本人ではありません。
ナレーターは、声優の岩崎了さんです。
アトロクで町田康本人の朗読に爆笑した僕としては、最初、
「町田さん本人じゃないのか」
とは思いました。
でも、実際に聴き始めると、そのことはすぐ気にならなくなりました。
岩崎了さんの朗読が、かなり合っています。
町田康の文章には、独特のリズムがあります。
関西弁のテンポ。
畳みかけるような会話。
妙に長い言い訳。
余計なひと言。
急に飛んでくるツッコミ。
このあたりが声になると、本当に面白い。
紙で読んだら自分の中で作ることになる「間」や会話のテンポを、岩崎了さんの朗読で聴くことができます。
登場人物たちが、頭の中で勝手にしゃべり始める感じがあります。
アトロクで聴いた町田康本人の朗読とは、もちろん違います。
でも、
これはこれで、めちゃくちゃいい。
と思いました。
『口訳 古事記』は耳で聴くのと相性がいい
町田康の文章を読んでいると、
「なんでこんなに余計なことを言うんだろう」
と思うことがあります。
同じようなことを何度も言ったり、どうでもいい理屈をこねたり、話が妙な方向へ転がっていったりします。
でも、その「余計なところ」が面白いんですよね。
そしてAudibleで聴くと、その面白さがさらに分かりやすくなります。
文章の意味だけではなく、
音として面白い。
今回聴いていて、そんなことを感じました。
特に僕の場合、ほとんど車の中で聴いています。
仕事柄、車で移動する時間が長いので、Audibleは普段からかなり使っています。
そんな移動中に『口訳 古事記』を流していると、退屈しません。
一人で運転しながらニヤニヤする。
ときどき、
「何を言ってるんだ、この人たちは」
と声が出る。
傍から見ると、ちょっと怪しいかもしれません。
でも、それくらい音声との相性がいい作品でした。
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Audibleのレビューを見ても、朗読を評価する声が多い
聴き終わってからAudibleのレビューも見てみました。
やはり、ナレーションを評価している声がかなりあります。
関西弁が作品に合っている。
朗読が面白い。
古事記なのに親しみやすく聴けた。
そういった感想を読んで、
「分かるなあ」
と思いました。
『古事記』というタイトルだけを見ると、どうしても身構えてしまいます。
でも実際に耳から入ってくるのは、偉そうだったり、情けなかったり、怒ったり、揉めたりしている神様たちの話です。
そうやって笑いながら聴いているうちに、
「そもそも元の古事記って、どういう話なんだろう」
と興味まで出てきます。
僕自身、これまで古事記をちゃんと読もうと思ったことは、ほとんどありませんでした。
でも『口訳 古事記』を聴いたあとだと、ちょっと読んでみたくなります。
それだけでも、この作品を聴いた意味はあった気がします。
アトロクの爆笑朗読から『口訳 古事記』へ
こうして振り返ってみると、僕が『口訳 古事記』にたどり着いたきっかけは、やっぱりアトロクでした。
町田康さんが『宇治拾遺物語』を朗読する。
ラジオの前で腹を抱えて笑う。
町田康の古典が気になる。
『口訳 古事記』を見つける。
Audibleで聴いてみる。
今度は岩崎了さんの朗読で、町田康の言葉が耳から入ってくる。
最初は別々だったものが、あとから一本につながった感じがあります。
僕はこういう出会い方がけっこう好きです。
アトロクを聴いていて、
「あ、この人面白いな」
と思った人の本を読んでみる。
そこからまた別の作家や作品を知る。
今回もまさにそれでした。
そして『口訳 古事記』を聴いて、もう一つ思ったことがあります。
古典って、もっと適当に楽しんでもいいのかもしれない。
全部理解しなくてもいい。
神様の名前を全部覚えなくてもいい。
まず笑って、
「なんだこれ」
と思って、
そこから興味を持ってもいい。
僕にとって『口訳 古事記』は、そんな作品でした。
町田康が好きな方。
古典に少し苦手意識がある方。
Audibleで面白い作品を探している方。
そして特に、アトロクで町田康さんの朗読を聴いて笑ったことがある方。
かなりおすすめです。
Audibleの無料体験やキャンペーンは、時期やアカウントによって内容が異なる場合があります。気になる方は、公式サイトで現在の対象条件を確認してみてください。
僕自身、「古事記を読もう」と思ってこの作品を選んだわけではありません。
アトロクで町田康に笑わされて、
その続きを追いかけていったら、
いつの間にか古事記を聴いていました。
本との出会い方って、こういうのでいいんだと思います。


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